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  • 2008.12.02 Tuesday
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近況などを少し その一

JUGEMテーマ:芸能


平成20年ももう3か月目というのに、まだ記事を一つしかアップしていないという、相変わらずの体たらくです。ネタがないわけではないのですが、やはり長い間休んでしまうと、再開するのが億劫になってしまうのだと思います。それを考えると、ほぼ毎日のように記事をエントリーしている方々には、尊敬の念すら覚えます。

さて、前回の記事の後から今日までの出来事をお話します。前回の記事をエントリーして約10日後、私は大阪にいました。今までなら松竹座の初春大歌舞伎を観るための大阪行だったと思いますが、今回は国立文楽劇場の初春公演をメインにして、松竹座は気になっていた「芋掘長者」を観に行きました。

「芋掘長者」は狂言風なコミカルな踊りで、踊りの上手な三津五郎丈がわざと下手に踊るというのがこの踊りのミソになっているのだと思いました。逆に下手な人が下手に踊ると、とても観られるものではないものになる気がします。三津五郎丈と橋之助丈の息の合い方といい、常磐津と長唄の掛け合いといい、とても満足した一幕でした。

次の「沼津」も魅力的で観てみたかったのですが、文楽の開演時間と「沼津」の終演時間が近いこともあり、今回は諦めることにしました。次にこのこってりとした顔合わせで観れるのは何年後かな、とも思いつつ、国立文楽劇場へ。

文楽初春公演は、2日に分けて夜・昼通しで見物しました。初日の演目は、「七福神宝の入舩」「祇園祭礼信仰記」「傾城恋飛脚」です。

「七福神宝の入舩」は七福神がそれぞれ自分が得意にしている芸を披露するという演目で、全体的にコミカルな内容でした。個人的には福禄寿の角兵衛獅子がツボにはまりました。福禄寿は専用のカシラなんですね。

「祇園祭礼信仰記」は歌舞伎でもよくかかる狂言で、今回は金閣寺を舞台にした場面です。雪舟の伝説(涙で鼠を描いた)と戦国時代(史実の織田信長、羽柴秀吉、松永久秀)の話を上手く組み合わせた物語で、初演時には3年間ヒットし続けたという大作です。今回の席は後方の席だったので、人形の顔などはよく見えません(一応オペラグラスは持って行っていましたが)。そこで、義太夫を集中して聴くように心がけました。しかし、舞台上方に字幕があり、どうしてもそこへ目がいってしまいます。あの字幕があるために、逆に語りに集中できなくなってしまうのが難点です。

この狂言で驚いた点は、セリを使って金閣寺の舞台転換をした点です。はじめは金閣寺の1階部分で話が進みます。物語の最後の方で東吉が最上階に閉じ込められている慶寿院を助ける場面では、東吉が金閣寺の横にある桜の木をよじ登っていくのですが、金閣寺が上下することで上ったり下りたりするのを表現しています。これを考えた昔の人はすごいなあと思います。

「傾城恋飛脚」は、これも歌舞伎でよくかかる、「恋飛脚大和往来」の原作となった作品です。今回は切場といわれるクライマックスの場面を、嶋大夫師・住大夫師という「切場語り」(現在、文楽には「切場語り」という最高格の大夫は3人しかいません)2人のリレーで上演するという贅沢な一幕です。

公金に手をつけた忠兵衛は、恋人の梅川とともに逃避行の最中です。最後に実の父親である孫右衛門に会おうと大和の国新口村にやってきましたが、追手はすぐ近くまで迫っています。結果的に偶然通りかかった孫右衛門と最後の対面をし、忠兵衛と梅川は再び御所街道を指して落ちていきます。

この夜の部で最も義太夫の情を前面に押し出す、親子の別れを描いた演目ですが、このあたりが歌舞伎興行との違いなのでしょうか。歌舞伎だと大体は最後に明るい舞踊で終わって、明るく華やかに追い出しをするところですが、文楽ではあまりそういうことを重要視していないように思えます。明るく華やかな気分で劇場を後にするか、義太夫の余韻を残しながら劇場を後にするか。どちらも間違いではないと思います。人が演じるのと、人形が演じるのとでも、もちろん違いはあると思います。どちらも楽しめた方が得ですね。

松竹座七月大歌舞伎・昼の部2

□橋弁慶
【配役】
・武蔵坊弁慶 愛之助
・従者 宗之助
・牛若丸 壱太郎

【感想など】
今回の興行では、舞踊が二つ出ていましたが、昼の部は長唄舞踊の『橋弁慶』です。この興行で掛かると知り、長唄好きの私は急いで伊十郎師のCDを取り寄せました。実際に聞いてみると大薩摩が多く、普通の長唄の部分が少ない印象を受けました。これに踊りが加わるとどうなるのかなと思いました。

実際に観てみると純粋な舞踊と言うよりは、『勧進帳』のような舞踊劇の印象を受けました。どちらも能を題材にしていますので、それは当然なのかもしれません。

弁慶は愛之助丈でした。あまり上背のない愛之助丈ですが、この舞台では大きく見えました。歌舞伎には弁慶が出る狂言が結構ありますが、この『橋弁慶』の弁慶は若い頃の話であるためか、向こう見ずのようなところがあるように見えました。

対する牛若丸は壱太郎丈です。去年この舞台で『連獅子』の子獅子を観て以来、壱太郎丈には注目しています。今回も子供の役ですが、実際には結構背が高いのですが、衣装の効果もあるためか可愛らしく見えました。動きもすばしっこくて、昔話で聞く牛若丸のイメージそのままだと思いました。

ところで、私は長唄の出囃子や浄瑠璃の出語りのときは、裃の紋に注目しています。大抵は主役となる役者の家の紋や家の芸にしている役者の家の紋なのですが、今回は席が遠いということもありよく分かりませんでした。ただ、なんとなく松竹の紋だったような気がします。弁慶と牛若丸のどちらが主役か分からないから、そのような折衷案になったのでしょうか。

30分ぐらいの短い舞踊でしたが、話の筋も分かりやすく十分楽しめました。

松竹座七月大歌舞伎・昼の部

「序」を書いてからすでに1か月以上たってしまい、大変申し訳ありません。今回は劇場で気になった点を箇条書きにしておきましたので、今までよりは書くのが楽になるとは思います。ただ、表現力がついてこないのが難点ではあるのですが。

私も初心者で気の利いたことがなかなか書けませんが、尻すぼみにならないように最後までしっかり書き続ける覚悟です。

□歌舞伎十八番の内 鳴神
【主な配役】
・鳴神上人 愛之助
・所化白雲坊 市蔵
・所化黒雲坊 男女蔵
・雲の絶間姫 孝太郎

【感想など】
今年私が観劇した興行には、いつも十八番物が一つは掛かっています。1月の『毛抜』、5月の『勧進帳』、そして今月の『鳴神』です。テレビで見たのも合わせれば、主要な十八番物は網羅したような気がします。後は『矢の根』ぐらいでしょうか(『助六』と『暫』はテレビにて拝見し、『押戻』は去年の南座の顔見世で観ました)。

今回は鳴神上人が海老蔵丈ですので、本家の荒事が観れると期待していましたが、休演により愛之助丈が代役となりました。まあ、海老蔵丈もまだ若いので今後観る機会があると思いますので、その機会を楽しみにしています。

代役の愛之助丈ですが、代わって2日目ということと、初役ということを考えれば、プロンプもつかず、しっかりと演じられていました。声も意外にあっているように思えます。しかし、荒事としての大らかさのようなものはまだいま一つです。もともと上方の役者さんですので、なかなか荒事を演じる機会も少ないでしょう。正直に言えば、見得を切ったときの迫力があまり感じられません。かどかどの見得や引っ込みの六方は手本通りにはできているようですが、本家と比べれば小さいような気がしました。ただ、2日目にしてあの出来であれば、立派な及第点でしょう。

雲の絶間姫は、これもまた上方役者の孝太郎丈です。孝太郎丈は町娘や腰元がニンだと思いますが、この役も立派に演じられていたと思います。この姫は、姫とはいいながらどこかキャリアウーマンのような感じがします。鳴神上人を堕落させるために、朝廷から遣わされた官女ということを考えれば、それは当然のことなのかもしれません。ただ、上人に酒を勧めるところなどは、年の離れた姉さん女房か、鬼嫁のような感じがしました。それから、滝にかかるしめ縄を切りに行くとき、岩の険しさを表そうとするあまり、転びすぎだったような気がします。

この幕で個人的に印象に残ったのは、市蔵丈の白雲坊です。『娘道成寺』にも所化は出ますが、それよりももっと生臭坊主のような感じがして、また、飄々とした感じが十八番物にあっていました。さすがに出演者の中でも一番の年配でもあり、落ち着いて観ることができました。

それから、後半の上人の荒れになったときの立ち回りが素晴らしかったです。立ち回り自体は5月の『め組の喧嘩』でも観て満足しましたが、この立ち回りでは不動明王の形を見せる「不動の見得」があったり、滝の側にある岩の上からトンボを飛んだり、見所がたくさんありました。

次こそは成田屋の『鳴神』を観たいと思いました。

松竹座七月大歌舞伎・序

昨年この松竹座で初めて大歌舞伎を見て、早くも1年が経ちました。昨年は坂田藤十郎丈の襲名披露興行でしたが、今年はまるで「松嶋屋奮闘公演」か、あるいは「仁左衛門歌舞伎」の再来のようです。また、出発前日の13日、海老蔵丈が怪我で休演というニュースがあり、その色がより濃くなったような気がします(歌六丈の萬屋は松嶋屋の親戚ですし、家橘丈は十二世仁左衛門丈の孫です)。

今回残念だったのは、やはり海老蔵丈の休演です。『女殺油地獄』の与兵衛の代役が仁左衛門丈というのは松嶋屋贔屓としてはうれしいところです(仁左衛門丈も今後はあまりこの役をやらないと言っていますし)。しかしながら、今回は海老蔵丈の与兵衛に合わせた配役ですから、海老蔵丈で観れなかったのはもったいない気がします。また、やはり家の芸である『鳴神』を海老蔵丈で観れなかったのは残念です。

海老蔵丈の休演でもっとも大きなチャンスを与えられたのは、薪車丈でしょう。以前『船弁慶』で義経を勤めたことはあるようですが、『義経千本桜』の義経はもちろん初役でしょう。薪車丈は、私にとっては初めて生で見た歌舞伎役者ですので、以前から陰ながら応援していました。急遽の代役で苦労もあるかと思いますが、千秋楽まで頑張ってほしいと思います。

また、愛之助丈は代役がなくても6狂言中5つに出演していたのに、代役が入り6狂言全てに出演することになりました。しかも、そのうち3つは主役です。千秋楽まで体調を崩さないか心配です。しかし、ここでの代役が愛之助丈にとって、将来的には大きな役に立つでしょう。

何はともあれ、海老蔵丈の早い回復を祈りつつ、松竹座の興行が無事に千秋楽を迎えるようお祈りいたします。

【参考リンク】
歌舞伎美人(海老蔵丈休演のお知らせ)

團菊祭五月大歌舞伎・夜の部2

○神明恵和合取組

【主な配役】
・め組辰五郎 菊五郎
・お仲 時蔵
・柴井町藤松 松緑
・九竜山浪右衛門 海老蔵
・島崎楼女将おなみ 萬次郎
・宇田川町長次郎 権十郎
・おもちゃの文次 翫雀
・山門の仙太 竹松
・伜又八 虎之介
・三ツ星半次 亀蔵
・背高の竹 市蔵
・三池八右衛門 右之助
・葉山九郎次 家橘
・露月町亀右衛門 團蔵
・江戸座喜太郎 左團次
・尾花屋女房おくら 田之助
・焚出し喜三郎 梅玉
・四ツ車大八 團十郎

【感想など】
この狂言は、江戸っ子の粋を見せる内容で、また、菊五郎劇団の息のあった立ち回りを楽しむ一幕でした。

菊五郎丈の辰五郎は、いかにも鳶の頭という雰囲気がしていました。今歌舞伎の世界で、いなせな江戸っ子役では菊五郎丈が一番はまっているように思えます。お屋敷方の顔を立てて一歩引く分別、ひと度喧嘩になると先頭を切って乗り込むところなどは、他の役者にはなかなか出せない菊五郎丈の魅力でしょう。

対する團十郎丈の四ツ車も大きさがあって、相撲取りのまとめ役という雰囲気が出ていました。團十郎丈の声は個人的にはあまり好きではありませんが、『勧進帳』の弁慶やこういった役には非常に合っていると思います。また、「鳶と相撲取りでは身分が違う」という思いがあって、それが言動のはしばしに表れており、鳶が抱く相撲取りへの憎々しさを、観客も共有できたように思います。

この狂言で、初めて「だんまり」というものを拝見しました。暗い中で何かを奪い合ったり、殴りかかったりするというシチュエーションは、喜劇やバラエティ番組のコントなどでもよく見ますが、歌舞伎がその起源だったというのには驚きました。

もう一つ特に取り上げておこうと思ったのは、伜又八役の虎之介丈です。以前テレビで『伽羅先代萩』の御殿の場で千松役をやっているのを観ました。そのときは特に何の感想もなかったのですが、今回はとても素晴らしく思えました。父親の扇雀丈がこの一座にいないにも関わらず、しっかり役を勤め、それでいて江戸っ子らしさも出ていました。今後の成長が楽しみな子役です。

鳶と相撲取りの立ち回りは、あれだけ大人数であるのにとても息が合っていました。その立ち回りのなかでも、最初は相撲取りが優勢なのに、次第に鳶が優勢になっていったり、喜劇風な立ち回りがあったり、大将同士の対決があったりなど変化があって面白かったです。これはやはり菊五郎劇団のまとまりがあって初めて可能となるのでしょう。

團菊祭五月大歌舞伎・夜の部1

○女暫
【主な配役】
・巴御前 萬次郎
・轟坊震斎 松緑
・女鯰若菜 菊之助
・成田五郎 海老蔵
・江田源三 亀三郎
・紅梅姫 亀寿
・木曽次郎 松也
・木曽駒若丸 梅枝
・手塚太郎 光
・東条五郎 男女蔵
・武蔵九郎 亀蔵
・局唐糸 右之助
・家老根井主膳 秀調
・猪俣平六 團蔵
・清水冠者義高 権十郎
・舞台番 三津五郎
・蒲冠者範頼 彦三郎

【感想など】
『暫』は以前テレビで見たことがありましたが、この『女暫』は初めてでした。歌舞伎ではこのように立役を女形に替えた狂言がたくさんあるようです。ただ、役名が変わっただけで、話の内容は『暫』と変わらないように思えました。これも、物語のストーリーを楽しむというよりも、歌舞伎の様式美を楽しむ狂言なのでしょう。

この幕は十七世市村羽左衛門丈の追善ということで、丈の息子である彦三郎丈、萬次郎丈、権十郎丈がそれぞれ主要な役を勤めました。特に、主役である巴御前を演じた萬次郎丈は、今月はプレッシャーがかかっただろうと思います。

萬次郎丈は台詞回しがよく、声も荒事向きのように聞こえました。荒事はストーリー的には馬鹿馬鹿しいものが多いですが、それを照れもなく大真面目にやっているのが好感が持てます(最後は役の上で照れてはいましたが)。

彦三郎丈も初見でしたが、藍隈の敵役と言えばこの人しかイメージできません。これまでテレビでもそういう役を見たことはないのですが、他にイメージできる人がいません。是非他の狂言(『車引』の時平公や『妹背山婦女庭訓』の蘇我入鹿)も見てみたいと思いました。

この幕で思ったのは、「やはり海老蔵丈は荒事役者だなあ」ということでした。与三郎のような二枚目や『勧進帳』の富樫などは、十一世團十郎丈にそっくり(見たことはありませんが)だということで姿かたちは結構なのですが、まだ台詞回しや所作は研究中のように思えます。一方、この幕の成田五郎などは荒事の家に生まれた御曹司として立派に勤めている雰囲気が伝わってくるため、こちらも安心して観ることができます。海老蔵丈には、若いうちに荒事を極めてほしいと思います。

やはり、主役が女形に替ったことで、いろいろと趣向が凝らされて面白く観ることができました。三津五郎丈の舞台番も最後にちょっと出るだけですが、萬次郎丈とのやり取りが面白く、また六法の指南も基本がよく分かり楽しむことができました。このような元禄時代から続く狂言を、将来にも残してもらいたいと思います。



○雨の五郎
【主な配役】
・曽我五郎 松緑

【感想など】
これは以前吉右衛門丈が踊っているのをテレビで見たことがあります。そのときは廓の若い衆が結構たくさん出ていたような感じがしましたが、今回は二人だけでした。人数が少ないということは、それだけ一人にかかるウェートが重くなりますので、それだけ自信があるという証拠なのかもしれません。

こういう舞踊を見ると思うのですが、なぜ主役がどこかへ行こうとすると誰かが邪魔をするのでしょうか。そういう邪魔者がいなければとても地味な踊りになってしまいそうなので、そういう邪魔者が出てくるのでしょう。廓の人間は喧嘩っ早いのかもしれません。

松緑丈の五郎は、さすがに家元だけあって上手いと思いました。私はまだ舞踊の上手い・下手はよく分かりませんが、振りと振りのつなぎ目がスムーズであれば上手いと考えています。松緑丈は、一つの振りが終わって次の振りになるまでの間、素になったり間のあく部分がなかったと思います。



○三ツ面子守
【主な配役】
・子守 三津五郎

【感想など】
さて、もう一方の家元・三津五郎丈の登場です。立役の踊りは勘三郎丈とのコンビでよく知っていますが、女形、しかも少女ということで予想がつきませんでした。ちなみに、この踊りはテレビでも見たことがありません。

一番印象に残ったのは、やはりお面の早替えです。原理は私のやっている神楽でも同じような面を使うので分かりますが、後見がいる分スムーズにできていました(神楽の場合は袴のポケットの中に入れておき、その場で二・三周する間に面を付けます)。自分たちの芸能でも使っているものを歌舞伎でも使っているというのはとても感動しました。

また、面によってその役柄を演じ分けできるというのは素晴らしいと思いました。何役かを演じ分けるといって頭では分かっていても、体はなかなか付いてきません。三津五郎丈ぐらいになると頭で考えるより、体が先に動くのでしょう。そこまでなるということは、よほどの練習を積まなければ難しいと思います。

今後も三津五郎丈の踊りをたくさん観たいと思いました。

團菊祭五月大歌舞伎・昼の部2

この二幕は当初観る予定はなかったのですが、他の予定が早く済んで時間が余ったので、急遽観ることにしました。そういう場合に幕見席は便利です。ちょっと待ち時間が長いというのは難点ですが。

実際のところ、『切られ与三』は睡魔に襲われていたため記憶が定かではありません。『女伊達』もあまりよく分かりませんでしたので、さらっと終わらせたいと思います。

○与話情浮名横櫛
【主な配役】
・与三郎 海老蔵
・お富 菊之助
・蝙蝠安 市蔵
・鳶頭金五郎 権十郎
・和泉屋多左衛門 左團次

【感想など】
上でも書いたように、睡魔に襲われてしまったため、特に源氏店の場の初めのほうは記憶が曖昧です。もっと芝居に集中していればこんなことはなくなるのだとは思うのですが。
まず印象に残ったのは、見染の場の海老蔵丈です。何が印象に残ったかというと、その声です。上方のつっころばしの役のようにも聞こえますし、一條大蔵卿のようにも聞こえますし、はたまた某コメディアンのバカ殿様のようにも聞こえました。

私はこの狂言は初見でしたので、この場の与三郎の台詞回しや声がどのようなものか分かりませんが、ちょっと違和感は感じました。大店の若旦那という役柄を考えると、つっころばしの演出が合っているような気もしますし、上方と江戸では演出も違うでしょうから、違うような気もしますし、なんとも言えません。

この狂言では役者が客席に下りて客席の間を回るという演出があるようで、この日もやっていましたが、幕見席からはまったく見えませんでした。ただ、私が知らないだけかもしれませんが、このように客席も使う芸能というのはあまりないのではないでしょうか。十三世仁左衛門丈の著書によると、他の狂言で客が役者に酒を勧めたというエピソードがあり、昔のほうが客席との距離が近く、おおらかな時代だったのだなあと思います(昔は客席ではなく、金丸座のように全ての席が平土間だったようですし)。

ストーリー的に言うと、なんだか最後が締まらないような感じがしました。他の演出では、多左衛門が去った後、与三郎とお富が再会するというのもあるそうですが、今回は多左衛門がお富の実の兄だということが分かったところで幕という演出だったため、中途半端な感じがしたのかもしれません。これも物語を楽しむというより、役者を楽しむ狂言なのかもしれません。その前に「寝るな」と言われそうですが。


○女伊達
【主な配役】
・木崎のお駒 芝翫
・中之嶋鳴平 門之助
・淀川の千蔵 翫雀

【感想など】
芝翫丈を観るのは、京都の顔見世以来2回目ですが、どちらも舞踊でした。前回も書きましたが、出番が舞踊一つだけというのはもったいない気がします。この月の狂言で言えば、『勧進帳』の義経に出演してもらいたかった気はします。最近、芝翫丈にしても、雀右衛門丈にしても、舞踊が多めで芝居が少ないのが気になります(芝翫丈は9月にはいろいろと出演するようですが)。

この一幕は打ち出しの舞踊としては華やかでよかったと思います。助六に憧れている女の気風のよさが伝わってくるようでした。傘を使った演出も結構だと思います。少々時間が短めというのも少し物足りないような気はしましたが、逆に打ち出しとしては気軽に観ることがいいのかもしれません。

『勧進帳』では元気がなかったように見えた巳紗鳳師も、この幕では元気そうに見えて安心しました。

團菊祭五月大歌舞伎・昼の部

まずは昼の部からです。

当初は『勧進帳』しか観劇する予定はなかったのですが、3日の他の用事が早く済んでしまったのと、海老蔵丈の『切られ与三』が多少気になっていましたので、急遽見に行くことにしました。実際には二日に分けて見ていますが、記事としては一つにまとめます。

一幕見席というのは今回が初めてだったのですが、なかなかの盛況ぶりです。ちょっと甘く見ていました。『切られ与三』は何とか座ることができましたが、『勧進帳』は立ち見になってしまいました。『勧進帳』の方は平日だったのに不思議なことです。ただ、座った方の『切られ与三』の方は睡魔に襲われてしまいましたので、果たして座った方がよかったのかは疑問です。

○『勧進帳』
【主な配役】
・武蔵坊弁慶 團十郎
・源義経 梅玉
・富樫左衛門 菊五郎

【感想など】
今年は明治天皇の御前で歌舞伎を披露して120年目ということで、この興行が始まる前には120年前と同じ場所で『勧進帳』が上演されました。

私にとっては1月の松竹座以来で、今回は菊五郎丈の富樫を見るために東京遠征を決定しました。海老蔵丈の富樫も悪くはないのですが、最近は生にしてもテレビにしても海老蔵丈ばかりでしたので、たまには大人の富樫が見てみたいと思ったからです。立役の梅玉丈の義経にも期待していました。

私にとって『勧進帳』の台詞回しの基本は、昭和60年南座の顔見世での舞台です。もちろん生で見てはいないのですが、下の関連商品で紹介しているCDを通勤中などに車の中でよく聴いています。そのときの配役は、團十郎丈の弁慶、孝夫(現仁左衛門)丈の富樫、扇雀(現藤十郎)丈の義経です。特に富樫の台詞回しは、今まで見たり聴いたりしたどの富樫よりも優れていると思います。

さて、菊五郎丈の富樫ですが、名乗りの場面では元気がないように感じました。ただ、私が幕見席で見ていたので、舞台から遠く離れていることがそう思えたのかもしれません。それから仁左衛門丈の富樫が歌うような台詞回しなのに対し、普通の台詞回しだったので余計にそう感じたのかもしれません。

さすがに、弁慶との山伏問答はよく弁慶の團十郎丈をリードして素晴らしいものでした。ゆっくり静かに問答がはじまり、「して、山伏のいでたちは」あたりからだんだんスピードが上がっていき、「そもそも、九字の真言とは〜」で最高潮に達するのが、聴いていても楽しいところです。また、山伏と関守の詰め寄りの場面の緊張感や、山伏一行を通すことへの複雑な思いがよく分かりました。前半で元気がないように見えたのは、その対比のためでしょうか。

片や團十郎丈の弁慶ですが、いつもながら安心して観ていられます。1月にも大阪の松竹座で観ましたが、その時よりも体調十分な印象を受けました。病気からの復帰後、初の歌舞伎座での『勧進帳』ということもあり、團十郎丈自身も気合が入っていたのでしょうか。

私はまだ、『勧進帳』の弁慶で最初から最後まで見たのは、團十郎丈しかありません。とは言うものの、今『勧進帳』の弁慶は、團十郎丈しか考えられません。上手い下手という話は置いておきます。実際に過去上手い弁慶はいたと思いますし、現在他にも上手い弁慶はいると思います。

山伏問答の場面は、先代や先々代の幸四郎丈や先々代の松緑丈のを聴いたことがありますが、私の中では何か違うように感じられます。確かに上手いとは思います。ひるがえって、團十郎丈はというと、決して口跡は良くないと思います。けれども、実際の弁慶はこんな声だったのかなあ、と思わせるような説得力があるように感じられます。もちろん、私も今を生きている誰もが弁慶の声を聞いたことがないのですが(実在したのかも定かではありませんが)。そんなこともあって、現在のところ家の芸であることを抜きにしても、私にとって團十郎丈の弁慶は唯一無二の存在です。もっと他の弁慶も観て比べてみたいものです。

さて、この狂言の真の主役である梅玉丈の判官ですが、前評判どおり、やはり品のある御大将ぶりでした。ここのところ、すべての狂言において義経役は梅玉丈が独り占めしている感じがしますが、それを納得させるだけの品格が感じられます。

歌舞伎において義経という役は、その狂言(『義経千本桜』、『勧進帳』、『一谷嫩軍記(熊谷陣屋)』など)の中では真の主役でありながら、あまり感情を表に出すことがなく、どちらかというと主役である弁慶や熊谷直実の脇で品格を見せる役柄というイメージがあります。それ故に、子供の頃から歌右衛門丈のそばで過ごし、自然に品格を身に付けた梅玉丈の芸風に合っているのかもしれません。

この狂言の注目点は、役者ばかりではありません。長唄としても名曲なのは以前からもブログの中で紹介していますが、いまだに私の中で長唄『勧進帳』は長唄の中で一番好きな曲です。今回は立唄が巳紗鳳師、立三味線が巳太郎師、立鼓が朴清師で、1月の松竹座と同じでした(これは、下のCDとも同じメンバーです)。現在の長唄の中ではベストメンバーだと個人的には思います。ただ、巳紗鳳師の声があまり元気そうではありませんでした。これも幕見席で舞台から遠かったのでそう感じただけかもしれませんが、ちょっと気がかりでした。

やはり、『勧進帳』は狂言として完成されているのと、話の筋をよく知っているのでとても見ごたえがあります。また、團菊祭ということで、團十郎丈と菊五郎丈のぶつかり合いを見ることができたので大満足でした。團十郎丈にはこれから先も市川宗家として、『勧進帳』のお手本を次の世代に伝えて欲しいと思いました。

※昼の部はひとつの記事にまとめると書きましたが、長くなってしまったので分割します。

【関連商品】


昭和60年の南座顔見世興行(12代市川團十郎襲名披露興行)で収録された『勧進帳』。場面ごとにチャプター分けされて便利です。




7代目幸四郎丈(弁慶)と15代目羽左衛門丈(富樫)の山伏問答が収録されています。




7代目芳村伊十郎師の録音です。古い録音なのでノイズが入って聞きづらいところもありますが、初めの富樫の台詞を伊十郎師が語っている珍しい録音です。

團菊祭五月大歌舞伎・序

またまた前回の記事から時間が空いてしまい、近頃面目次第もございません。ネタがない、というわけではないのですが、間が開いてしまうとやはり億劫になってしまうようで。何とかこの三日坊主の性分は直したいと思うのですが。

さて、前回の記事に書きましたとおり、今月初め連休を利用して團菊祭五月大歌舞伎を見に歌舞伎座へ行ってきました。実際のところ絶対に見てみたいという狂言はありませんでした。しかし、今の歌舞伎座がもうすぐ建て直しされるという噂もありしたので、今の歌舞伎座を見ておこうと思い、遠征を決めました。

昼の部は『勧進帳』だけ見ればよいと思っていましたのでチケットは取らず、夜の部のみ3階A席を取りました。一度は1階で見てみたいものですが、遠征自体に費用がかかっていますので、遠い将来の話になりそうです。

結局、二日目の昼の部で『勧進帳』の幕見、夜の部の通し、三日目の昼の部で『与話情浮名横櫛(切られ与三)』と『女伊達』を幕見で観劇しました。幕見席は舞台までが遠いのがネックですが、千円ちょっとで歌舞伎が見れるというのは魅力的です。金額が安いためか、両日とも若い人たちや外国の人たちでいっぱいでした。外国の方が多いというのは、松竹座や南座ではあまり見られなかった光景です。

幕見席のチケット販売を待っている間、歌舞伎座の建物を見ていたのですが、やはりところどころ古くなっているのが分かります。まだ新しい松竹座や15年前に改築された南座と比べるからでしょうが、やはり建て替えは必要なのかなと思いました。その間どこで歌舞伎をするのだろうといらぬ心配もしていましたが(ぜひ地方へ巡業してほしいものです)。

この團菊祭では、いままで見たことがなかった役者を見ることができました。これまで松竹座と南座でほぼ上方系の役者がメインの舞台でした。今回梅玉丈、三津五郎丈、彦三郎丈、萬次郎丈、松緑丈、菊之助丈など、これまでテレビでしか見たことがなかった役者を見れたのは満足でした。また、家元2人の踊りが見れたのもいい経験になりました。

ただ、満足できなかった点もあります。いくら團菊祭で菊五郎劇団主体の興行とはいえ、義太夫狂言が一つもなかったのは物足りなさを感じました。歌舞伎座では、2月、3月と義太夫狂言の通し狂言、4月も3つありましたので、今月はその反動かもしれません。

感想は忘れないうちに順次書いていこうと思います。まずは、導入部分まで。

吉例顔見世興行(夜の部) 雁のたより

【主な配役】
・髪結三二五郎七実は浅香与一郎 藤十郎
・愛妾司 扇雀
・若旦那万屋金之助 翫雀
・乳母お光 竹三郎
・下剃の安 亀鶴
・若殿前野左司馬 愛之助
・家老高木治郎太夫 段四郎
・花車お玉 秀太郎

【感想など】
この狂言ははっきり言ってしまうとコントです。吉本新喜劇のルーツといっても間違っていないでしょう。7月に松竹座で見た『魚屋宗五郎』でも笑わせてもらいましたが、これはやはり江戸の笑いです。今回の『雁のたより』はコテコテの上方の笑いで、『魚屋宗五郎』とはまた違った面白さがありました。

上方狂言ということで上方の役者を揃えています。それにしても、純粋な上方役者の竹三郎丈が昼夜通してこの狂言のみで、なおかつ出演時間ほんの数分というのは非常気の毒に思えます。ただ、数分の出演時間にもかかわらず、存在感は非常に大きなものがありました。

笑いとしてはベタな笑いが多いのですが、現代のお笑いにも通じるところがあります。三二五六七を捕まえる罠を試そうとして仲間から袋叩きされるところなど、現代のコントでもよく見られると思います。そう考えると、今のお笑いは昔から余り変わっていないのだなあと思いました。

さすがに上方の役者は何気ないセリフのやり取りが上手いと思います。藤十郎丈と秀太郎丈のやり取りは漫才を見ているかのようです。多分アドリブがかなり含まれているのでしょうが、全く破綻をきたさないのはすごい腕だと思います。個人的に藤十郎丈と翫雀丈のやり取りには笑わせてもらいました。

回りが上方役者に囲まれる中、一人江戸の役者の段四郎丈ですが、分別のある家老役として舞台を締めていました。『俊寛』の瀬尾のような敵役が本役でしょうが、このようなご家老役もぴったりです。

物語的には、「そんな馬鹿な」というような幕切れですが、上方らしい芝居を見て大満足でした。このような芝居はとても江戸の役者にはできないでしょう。役者が照れてしまっては、見ているお客のほうが恥ずかしくなるものです。このような馬鹿らしい芝居こそ真面目にやった方が受ける気がします。

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